自然の岩場でロープクライミングをする際、使用する支点には様々な種類があります。
体重をかけた支点が抜ける場合もあります。支点の種類や強度についての知識を付け、安全にクライミングを楽しみましょう。
資料提供:トミー・クライミングクラブ
クライミングをするにあたって、支点に体重をかける場面は必ず現れます。
その支点がどの程度の強度なのか?落ちても大丈夫なのか?を判断できる事が大切です。
それが分からないまま墜落することは自分自身を危険に晒します。
これが我々が体重を預け、数メートル墜落する時に使用している支点です。
イメージしやすいように、ペットボトルのキャップを並べて置いています。
支点の長さについてイメージしてください。
ペットボトルのキャップ1つ程度の長さの物もあります。
そして強度は十分ではありません。(墜落は許されません)
次に特定の支点の構造について紹介します。
カットアンカーと呼ばれる支点です。「ネジ」が差し込まれているだけで、ネジの部分はペットボトルのキャップ1つよりも短いです。
この支点の強度も十分ではありません。
このような様々な支点が設置されているのが自然の岩場です。各自で判断して登るか、登らないか、の判断をできるようにしましょう。
そうしなければ危険です。正しい知識を身に着け、安全にクライミングを楽しみましょう。
支点を紹介していきます。
強度:5kN程度
見分け方:見た目(写真参照)
墜落を想定して設置している支点ではありません。
また、静荷重であっても状態によっては破断・抜ける可能性があります。
そのため、懸垂下降等でも出来れば使いたくない支点です。
クライミングの支点としては不適です。
強度:10~15kN程度
見分け方:見た目(写真参照)
あごの部分が岩に接地している場合、ある程度強度がでます。
現在、新しく支点設置する際に使用されることは無く、基本的に20年以上前に施工されたものと思って良いでしょう。
そのため、岩・支点ともに状態が悪い場合も多く、信頼して使用できる物ではありません。
クライミングの支点としては不適です。
強度:15kN程度
見分け方:芯棒の有無
芯棒を打ち込む事により拡張し固定されます。
そのため、支点自体が中空で強度が低いです。
クライミングの支点としては不適です。
強度:10~17kN程度
見分け方:頭が六角ボルトかどうか
アンカーを打ち込む事でコーンが埋まっていき拡張します。
施工の良し悪しにより強度不足の場合があります。
クライミングの支点としては不適です。
強度:25kN
ナットを締めるとボルトが手前に引かれ、ウェッジ部分が拡張します。
ナットを締める際に空回りすると固定されていないことが判断できるため、施工状態を判断しやすいです。
クライミングの支点として利用できます。
ボルトが空回りするか、ナットが緩んでいるか、等の状態確認は必要です。
強度:25kN以上
岩とボルトの隙間を接着剤で固めて一体化させます。
施工状態によっては、見た目はきれいでも抜ける可能性があります。接着剤の種類等も関係しており、見極めは困難です。
クライミングの支点として利用できます。
接着剤原因で抜けた例もあり、必ずしも十分な強度が保証されているわけではありません。
岩の割れ目にハンマーで打ち込む。アルパインクライミング、沢登りなどで使用されます。
アルパインの練習に使われる岩場でよく見かけます。
アゴが効いていれば強度はあるが、古い支点も多く信用はできません。
基本的に墜落に耐えられる強度はなく、静的荷重でもバックアップをとって使用することが必要です。
クライミングをする際に必要な支点の強度はUIAA(国際山岳連盟)の基準で20kNとなっています。
これは墜落によって「人間が致命傷を受けるか」が基準となっています。
前述した支点のうち、この基準を満たすのは「ウェッジアンカー」、「ケミカルアンカー」のみです。
それ以外の支点は破断の可能性を考慮して使用すべきです。
支点の強度に関して大きく影響するのが「錆」です。
ケミカルアンカー、ウェッジアンカーを使用しており、十分な強度があるとされていても、錆によって破断する場合はあります。
特に海沿いの支点は注意が必要とされています。(海沿いの方が環境要因的に錆びやすい場合が多い)
また、ボルト・ハンガーで異なる種類の金属を使用した場合に怒る異種金属接触腐食(ガルバニックコロージョン)にも注意が必要です。
クライミングの支点は施工されたタイミングも様々で、古い物の状態は悪い事が多いです。
そもそもクライミングに適さない支点を利用している場合もあります。
そういった支点の交換(リボルト)はJFAにより実施されています。
リボルトの費用はJFAの会費から支払われています。外岩でロープクライミングをする方は入会することをお勧めします。